こんにちは。
札幌のユアーズデンタルクリニック院長の湯口です。
以前のブログで歯肉退縮の治療についてお話しました。
歯肉退縮(歯ぐき下がり・歯ぐき退縮)は下がってしまった歯肉の状態を歯科臨床家がディスカッションしやすいように分類されています。
その中で最も有名なのが1985年に発表されたMillerの分類です(現在支持されているCairoの分類についてはいつか別の機会にご紹介します)。
それについては以前のブログで解説しています。
詳しくはこちらから↓
https://yours-dental.com/歯ぐき下がり(歯肉退縮)の治療について/
実際にこのブログ↑を読み当院へ来院され歯肉退縮治療を行なった患者さまも先日治療を終えました。
治療後の患者さまの感想は下記の通りです。
歯ぐき退縮を改善する根面被覆という手術の最中もリラックスして寝てたりしたそうです。
ここに通院するようになってから歯磨きを意識してするようになったとのことで歯科クリニックとして嬉しい言葉ばかりです。
実際の症例写真の掲載も快諾していただいたので下記に掲載します。
主訴である歯ぐきの退縮が改善していることが分かります。
なぜこのような良好な結果が出るのか、考えてみると二つの理由があるかと思います。
それは①「考える力」+②「技術力」です。
まず患者さまが来院されたときに、どういった原因で歯ぐきが痩せてしまったのか、どのくらい歯ぐきが下がっているのか、一度に何本まで治療できるのか、手術するならどんな術式が良いのか・・などを考えなくてはいけません。
やみくもに手術をするのではなく、戦略を練って対処する姿勢が重要だと考えます。
その際に私が参考にしているのがエビデンス(文献)です。
世界中で発表されている臨床関連研究の中でも質が高いと自分で判断した文献を読み、そこで得られた知識を”鵜呑み”にするのではなく、自分オリジナルの臨床考察・臨床経験とを統合するようにしています。
(Evidence based medicine is not “cookbook” medicine. by Sackett DL)
またEBM(エビデンスベースドメディスン)とは「よく知らない他人が確認できないテクニックで見たこともない症例を処置したいわば他人のデータベース」であるのに対し、
経験知は、「自分が自分の一定レベルのテクニックで良く知っている症例を処置した自分のデータベース」なのでその経験知も重要だとペリオ文献解釈について山本浩正先生(著書多数のDr.ヒロ)に教えていただきました。
質の高いエビデンスとして根面被覆(Root Cover)のある有名なシステマチックレビューを参考にすると、
Miller Class Ⅰ・Ⅱの歯肉退縮における根面被覆の際に、結合組織移植(CTG)の併用がCRC(Complete Root Cover 完全根面被覆)、MRC(Mean Root Cover 平均根面被覆)、CAL(クリニカルアタッチメント)、KT width(角化歯肉幅)の増加においてもっとも有効で、かつ長期経過も優れているしそれらを示すエビデンスも十分であるということが分かります。
Periodontal Soft Tissue Root Coverage Procedures: A Systematic Review From the AAP Regeneration Workshop J Periodontol 2015;86(Suppl.):S8-S51.
また、この文献では従来のCAF+CTGと、縦切開なしのトンネルアプローチ+CTGとでは有意差はないことや、
FGGから切り取ったCTGも、ドナーから直接採取したCTGも効果は変わらないことなど手術手技に関しても合わせて報告されています。
紹介したのはあくまで一つの文献ですが、この後に今まで発表された臨床研究報告やRCTでも根面被覆の第一選択として歯肉移植を併用する術式が最も有効性が高いことが報告されています。
こういったデータから今回の目の前の症例にはどんな術式・治療法で治療するのが最適なのかを考えてご提案するという①の「考える力」だと思います。
また②の「技術力」はいうまでもありませんが、やはり丁寧な切開・剥離・縫合の歯周形成外科の基本ができるかどうか、腕が動くかどうかが結果を左右します。
開業医は卒後にどのような臨床教育を受けたかでその後の臨床力は大きく変わります。
卒後臨床教育に力を入れている歯科医院に勤務したり、開業医が中心となって勉強会を行うスタディグループ(例:5-D Japanなど)で研鑽を積むことで技術力は身につきます。
特に根面被覆は歯ぐきが再び覆われるかどうかという結果がとても分かりやすく、術者の技量の差が出やすい治療です。
そのために日々の技量の鍛錬は欠かせないのです。
歯肉退縮した結果の歯根面露出は、症状がなければ必ずしも治療が必要な疾患扱いとはなりませんが、
「歯ぐきが下がって見た目が気になる」
という方は意外に多いように感じます。
歯並びが良くないので矯正治療をしたら歯ぐきが下がってしまったという方もいらっしゃいます。
「審美障害」はQOL低下の重大な要因なので、患者さまの主訴の中に歯肉退縮の改善が含まれていれば、少なくとも解決方法を提案できる歯科医師でいたいと思います。
札幌にある審美歯科(カテゴリーに分けた方が分かりやすいかと思ってこういう表現にしています)として、歯にセラミックの差し歯をかぶせる治療だけでなく、歯並び改善の矯正治療や歯ぐき退縮の審美改善も含めて総合的なアンチエイジング審美歯科治療をご提供いたします。
また、「根面被覆のアウトソーシング」として、他院さまからのご紹介の患者さまもお引き受けいたします。
一般歯科医院さまや矯正歯科医院さまに通院中の患者さまも、ご紹介していただければ治療いたします。
治療終了後はすみやかに元の歯科医院さまに通っていただくことも可能です。
当院のお問い合わせページからメールをいただければ返信いたします。
「歯ぐき専門クリニック」としてどうぞご自由にご活用ください。