Q:歯周病を治したいです。
まずどうしたらいいですか?
A:まずは精密な診断が必要です。
どのくらい歯ぐきが病んでいるのかを正確に把握する必要があります。
歯ぐきの炎症が強すぎる場合には実際の病態よりもひどい所見が得られることがあり、オーバートリートメント(すぐ抜歯するなど)になってしまう場合があります。
炎症がどの程度起きているのかを歯ぐきの検査をして把握し、骨がどの程度溶けてしまっているかをレントゲンで確認することが必須です。
かつ、歯周病を悪化させている因子があるかどうかも同時に確認する必要があります。
原因を特定した上で最適な処置を考えるのが歯周病治療の第一歩です。
Q:歯周病で歯を失うって本当ですか?
A:本当です。
日本人は平均58.5歳で歯を失うのですがその原因の第一位(37.1%)は歯周病です。
歯周病菌の出す毒素によってまず歯ぐきが炎症を起こします。
歯ぐきの炎症によって歯を支えている骨が溶けることによって歯が徐々にグラグラになってきます。
歯を支える骨がほとんど溶けてしまうと最終的には抜けてしまいます。
Q:歯周病は全身疾患や遺伝などは関係ありますか?
A:関係しています。
歯周病の直接の原因は、細菌性のプラークですが、その背景に、全身の病気、遺伝、生活習慣などが関与している事があります。
反対に歯周病から重篤な疾患を引き起こすこともあります。
Q:口臭が非常に気になります。
解決策を教えてください。
A:口臭の原因が、歯周病であれば、歯科医院で治療を受けながら、歯磨きをしっかり行って汚れを除去します。
歯間ブラシやデンタルフロスを使うと、より効果的です。
また、口の中が乾燥すると口臭が出やすいので、鼻呼吸を心がけ、こまめに水分をとるようにすれば、口の中が潤うため、細菌が繁殖しにくくなります。
舌苔の除去も大切です。1日1回舌ブラシを使ってケアを行いましょう。
Q:歯周病にならないために気をつけることがあれば教えて欲しいです。
A:まず歯医者さんに歯周病検診に行ってください。
現在の歯周病の状態を把握することが第一です。
次に歯周病の状態に合わせてパーソナルな治療もしくはメインテナンスの計画を立てます。
担当の歯科医師と歯科衛生士と歯磨きの頻度ややり方、食事の内容や生活習慣なども考慮して定期的な歯のメインテナンスの予定を組むことが大事です。
歯のケアを行うことが歯の健康寿命を伸ばします。
また、全身の健康状態を改善することも歯周病予防に繋がります。
Q:歯がぐらぐらしているのですが、元の状態に戻りますか?
A:ぐらぐらな歯を残せる方法はあります。
水平的に歯の根元まで骨が溶けてしまっている場合に歯を残すことは難しいですが、垂直的な骨の吸収であれば、例え深い歯周ポケットがあっても歯周組織再生療法を行なって歯を残せる可能性があります。
再生療法とは、歯ぐきを切開して歯の根っこの方まで沈着している歯石の除去を行い、溶けてしまった骨の代わりになるような材料を歯ぐきの中に用いることで歯ぐきや骨を再生させて歯の寿命を伸ばす方法です。
Q:保険治療で歯周病は治りますか?
A:初期の歯周病なら治ります。
炎症が歯ぐきのみで留まっていて骨まで溶けていない、もしくは骨も溶けているが軽度であれば、保険の歯周病治療で治すことができます。
中等度以上に進行した歯周病を保険で治そうとすると、保険外治療(自費治療)で治す場合と結果が異なってきます。
保険治療で行う歯周病治療の場合は最終的に歯が長くなってしまうことが多いため注意が必要です。
Q:歯周病治療の保険治療と自費治療の違いは何ですか?
A:歯周治療のゴール設定の違いです。
前者は、溶けてしまった骨に合わせて歯ぐきを下げることによって歯周ポケットを減らすことをゴールにしているのに対して、後者は溶けてしまった骨を再生させることによって歯ぐきを下げることなく相対的に歯周ポケットを減らすことをゴールにしている点です。
歯周ポケットを減らすために歯ぐきを下げてしまうと、見た目が悪くなったり知覚過敏の問題や根面にできるむし歯の問題が出てきて歯の寿命が短くなってしまう可能性があります。
逆に骨を増やして歯ぐきを下げない歯周組織再生療法を行うと、そういった問題が起きずにかつ歯が長持ちするメリットが生まれます。
ただし、再生療法や歯周形成外科手術(歯ぐきの形を整える手術)は保険適応外の難易度の高い手術になり、費用はクリニックや担当医によって異なります。
Q:歯周組織再生療法は痛いですか?
A:手術の時は麻酔をするので痛くないです。
手術後も、痛み止めのお薬を飲んでいたら治まる程度の痛みしか出ません。通常2、3日で治ります。ただし腫れる場合や内出血などが起こる場合もありますので術後2週間は安静にしていただくことが必要です。
術後は身体の免疫機能が治癒に導いてくれるため、身体の負荷がかかるようなことは避けていただきます。
具体的には大きく口を開ける、唇を引っ張る、飲酒をする、激しい運動をする、夜中まで仕事をする、出張に行くなどは避けていただいた方が治りが早いです。
Q:歯ぐき下がりの原因は何ですか?
A:原因は様々あります。
歯ぐきは年齢とともに少しずつ下がっていくものですが、特に以下のような理由で劇的に下がることがあります。
それは、歯磨きの時の歯ブラシ圧が強い場合や、矯正治療で無理に歯を動かした場合や、歯ぎしりなどが原因です。
一度下がってしまった歯ぐきは自然には元には戻りません。
Q:歯ぐき下がりはそのままにしておくとどうなりますか?
A:歯ぐき下がりが起こると歯が長くなります。
歯が長くなることによって見た目が悪くなることや知覚過敏が起きます。一度下がってしまった歯ぐきは元に戻らないのでずっとその状態で過ごすことになります。
また、高齢になると根面むし歯といって露出した歯根面にむし歯を作りやすくなってしまうことがあります。
Q:歯ぐき下がり(歯ぐき退縮、歯肉退縮)を治すことはできますか?
A:歯ぐき下がり(歯ぐき退縮、歯肉退縮)を治すことは可能です。
歯ぐき下がりには2つの種類があり、歯周病ではないのに歯ぐきだけが下がってしまっている場合と、歯周病も併発して歯ぐきが下がってしまっている場合とがあります。
前者の方は歯周形成外科手術を行うことで歯ぐき下がりを治すことができますし、後者の場合には歯周組織再生療法が必要になります。
Q:実際に歯ぐき下がりの手術はどんなことをするんですか?
A:歯ぐきの移植をします。
上の歯の裏側から自分の歯ぐきの一部を採取して、下がった部分に貼り付けて縫います。
自分の歯ぐきなので拒絶反応がないですし、採取した部分の歯ぐきも元通りに再生します。
歯ぐきの移植を併用した根面被覆という歯周形成外科手術を行うことで、下がってしまった歯ぐきをもう一度復活することができます。
Q:歯ぐき下がりの手術は痛いですか?
A:歯ぐきの手術自体は麻酔をするので痛くないです。
歯ぐきが下がっている側は手術後も痛みは少ないです。
ただ、歯ぐきを採取した口蓋側の歯ぐきは術後2週間くらいヒリヒリした違和感は出ることがあります。
熱いもの、辛いもの、酸味のある飲み物や食べ物を避けていただきます。
治りかけの口内炎のような症状ですので2週間以降は何でもなくなります。手術自体は1〜2時間で終わりますし、浸潤麻酔しかしないので、手術が終わった直後から普通に歩いて帰ることができます。
Q:歯ぐきの手術の時に注意することはありますか?
A:手術後に安静にしていただくことです。
特に手術直後は糸で縫合していますので、自分で鏡で見るために唇をめくったり、大きく口を開けたりすることは縫合糸が緩んだり、傷が開いたりすることがあるので注意していただきます。
また口の中に食べ物を入れすぎないように細かくした食べ物を食べていただいたり、術後の出血の予防や歯ぐきの治癒促進のために飲酒は控えてもらいます。
手術日は長時間の入浴や激しい運動も控えていただきます。術後2週間が過ぎれば通常通りの生活に戻れます。
Q:歯ぐきの手術は普通の歯医者さんでもできるんですか?
それとも口腔外科に行かないとダメですか?
A:普通の歯医者さんでも口腔外科でもできません。
そもそも歯ぐきの再生手術を行なっている歯医者さんは多くありません。特に歯ぐき下がりの手術は歯周形成外科という特殊な手術なので、通常の口腔外科でも行なっていません。
どちらかと言うと歯周病治療に精通している歯医者さんに診てもらうことをオススメします。
もちろん当院では再生療法も歯ぐき下がりの手術も両方行なっています。
まずはご相談ください。
Q:歯列矯正後ですが歯ぐき下がり(歯ぐき退縮、歯肉退縮)の治療は可能ですか?
A:歯列矯正後でも歯ぐき下がりの治療は可能です。
矯正治療後に歯ぐきが下がってしまった場合でもできますし、矯正治療前に重篤な歯ぐき下がりがあれば、矯正治療前に手術を行うこともできます。
非抜歯矯正やインビザラインなどのマウスピース矯正後に歯ぐきが下がる方がいますので注意が必要です。
事前に担当の矯正医と相談していただくことをおすすめします。
Q:歯ぐきの隙間(ブラックトライアングル)は歯ぐきの手術で治りますか?
A:歯ぐきの隙間を歯ぐきの手術だけで治すのは現時点では難しいです。
通常は歯ぐきの手術と併用してダイレクトボンディング(審美的な詰め物)やラミネートベニア(セラミック貼り付け)治療を行うことで歯ぐきの隙間は改善します。
最先端の治療で、術後の経過期間は短いですが、歯ぐきの手術だけでブラックトライアングルを解消できる術式はあります。
Q:歯ぐき下がりの手術をしても後戻りになることはありますか?
A:後戻りする場合もあります。
歯ぐきの移植後の治癒形態の多くは上皮性付着(上皮細胞同士による結合様式)になるので結合組織性付着(歯根膜が歯のセメント質に封入している結合様式)に比べると結合の強さは劣りますが、歯ぐきに炎症がない状態を保つことができれば上皮性付着でも頑丈な歯ぐきになります。
さらに歯ぐきの厚みも増しているので血流の改善にも繋がり、後戻りはしにくくなります。逆に歯ぐきに炎症を起こしてしまうと後戻りが起きてしまう可能性が高くなります。
手術前・後の歯ぐきに炎症がないことが後戻りを起こさないポイントです。
Q:歯ぐきの再生手術などの技術はどのように習得しましたか?
A:日本有数の開業医の元で習得しました。
大学を卒業後に日本でも高名な開業医に師事し、そこで勤務しながら海外の著名な先生(P.Cortelliniなど)のセミナーを受講し経験を積みました。
現在も卒後研修機関である5-D Japanというスタディグループに所属し、最新の論文を読みながら技術の研鑽を続けています。