こんにちは。
天然歯の保存も、難易度の高いインプラント治療も両方極めたい札幌の歯医者、ユアーズデンタルクリニック院長の湯口晃弘です。
今回からこんな枕詞にしてみました笑。
先日行ったインプラントの骨増生の治療結果が良好だったのでご報告いたします。
そもそもインプラントを行う場合には歯槽骨が吸収してしまっていることが多いため、
インプラントを支える土台となる骨が不十分であることが多いのです。
そこで土台となる骨を増やす処置を骨増生とか、GBRとか、歯槽堤増大術などと言います。
骨増生を行なって十分な骨の量と、骨の高さが得られれば、そこに埋入するインプラントも長持ちすることが可能になります。
つまり骨増生は、インプラントができないと言われてしまった方に一筋の希望の光が差し込むだけでなく、
インプラントそのものの長期の生存率を向上させることができるメリットがあるのです。
しかし、骨増生は術者のテクニカルセンシティブな部分があり、
手技的に難しいため、積極的に行っていない歯医者さんもいます。
特に前歯部エリアは審美領域であり、日本人は前歯の歯槽骨が極端に薄いため、
他院でインプラント治療が難しいと言われてしまった方や、他院から直接ご紹介いただく方などを治療する機会が少なくありません。
骨増生が成功するポイントはいくつかあるのですが、
もっとも重要なのが「一次創傷治癒に導けるかどうか」です。
これは骨増生を行う際に、歯肉弁がしっかりと閉鎖できるかどうかという意味です。
この一次創傷閉鎖ができなければ、創面が裂開して、たちまち口腔内の常在菌による感染が起きてしまい、
骨増生はもとよりインプラント治療も成功しません。
骨が足りていないところに、骨を増やすお薬を入れるので、術前よりもボリューミーになるのですが、
歯ぐきの量がそのままだと単純に歯肉弁が届かなくて縫合しても創面を閉鎖できません。
そこで歯肉弁を物理的に進展させるために、歯肉弁の内側にある骨膜と筋肉を一層切開する減張切開を入れなければいけません。
この減張切開とは、歯肉弁が突っ張るテンションを減少させるための切開です。
これを行うことで、術前よりボリューミーになった術野を完全に閉鎖できるようになるのです。
しっかりと減張切開を加えることができれば、確実に創傷閉鎖が得られて、骨増生は成功へと導くことができます。
もちろん解剖学的な知識や、細かい技術が必要であることは言うまでもありません。
今回行なってケースは、もともと前歯のロングスパンのブリッジが入っており、
咬合力が強い方だと長いスパンのブリッジは長期予後が悪いので、前歯の真ん中にインプラントを入れることで、
ブリッジの支柱となっていた患者さん自身の歯を守ろうと計画しました。
骨増生を行うタイミングは2つあり、一つ目はインプラント埋入と同時に行うSimultanious approachで、
二つ目がインプラント埋入の前に骨増生のみを行なって、骨増生が達成できたのを確認してからインプラント埋入を行うStaged approachです。
文献的には水平GBRや垂直GBRなど大掛かりな骨増生はStaged approachが推奨されており、
私もStaged approachを好んでよく行なっています。
理由としては、Staged approachの方が、インプラントが感染するリスクを低くすることができるのと、
骨増生のチャンスが2回あるからと言う理由です。
今回もStaged approachを行なって半年以上待ちました。
①〜③まで歯科用CTの術前・術後の比較を見ていただけると、骨増生が達成できていることが分かっていただけると思います。
インプラントを埋入するのに十分な骨の高さと幅が得られています。
このように難症例のケースにおいても、様々な配慮を行うことで安全で確実なオペが可能になるのです。
骨がなくてインプラントができなくて困っている方や、前歯にインプラントを考えているが不安な方は、
一度お問い合わせください。