こんにちは。
歯ぐき治療の専門家にして札幌の審美歯科クリニックであるユアーズデンタルクリニック院長の湯口晃弘です。
歯ぐき退縮の治療解説動画がYoutubeで60万回以上再生されている「歯医者Youtuber」でもあります笑。
そんな私が今回お話しするのは「歯ぐき退縮」の治療の後の治り方についてです。
「歯ぐき退縮」あるいは「歯ぐき下がり」が気になって色々と調べている方もいるかもしれません。
「歯ぐきがどんどん下がってきた。歯周病なのかも」
「この歯ぐき下がりは手術しなきゃ治らないのかな・・」
「手術したとしても歯周病になりやすくなる!?」
そんなお悩みのある方には有意義な内容になっています。
歯ぐきが下がる原因は様々ありますが、
その歯の周りの歯ぐきや骨が一部なくなってしまっていることが原因です。
そもそも歯ぐきの構造はどうなっているかと言うと、
歯というのは歯ぐきから生えているんですが、歯と歯ぐき(歯肉)の間には歯肉溝という“ミゾ”があります。
健康な歯ぐきでは、この溝の深さは1~2mm程度ですが、この“ミゾ”にプラーク(歯垢)がたまり、プラークの細菌により歯肉が炎症を起こし腫れていき、“ミゾ”が深くなります。
これを歯周ポケットといいます。
「歯周ポケット」とは病的な状態を差す言葉ということを覚えておいてください。
(ポイント①:歯周ポケットは病気を指す言葉!)
この炎症が進行すると歯肉が破壊され、歯周ポケットはより深くなり歯周病となります。
歯周病は歯を支える骨(歯槽骨)を溶かして歯が抜け落ちてしまう病気です。
このミゾの開始点である歯と歯ぐきの境目となる上皮は頑丈な付着様式でくっついています。
つまり健康な方はこの「付着」があることによって歯周病にならずに済んでいます。
(ポイント②:「付着」が大事!)
この付着様式は「上皮性付着」と「結合組織性付着」に分けられます。
上皮性付着とは、上皮細胞同士がくっつくデスモゾーム結合の半分のヘミデスモゾーム結合という接着様式でエナメル質と接している部分を指します。
一方、結合組織付着とは歯根膜という線維が歯のセメント質の中に埋入した状態で付着している部分を指します。
付着の強さは後者の方がより頑丈です。
この付着によって歯は歯ぐきや骨と強固につなぎ感染から守っているんです。
ところが歯の周りにプラークが溜まってくると、
この細胞同士の鎖である上皮付着が破壊されて細胞と細胞の間に亀裂を生じます。
これが歯周ポケットの始まりです。
歯周病がさらに進行すると結合組織付着も破壊されて、歯周ポケットの深さがどんどん深くなります。
歯周ポケットの深さが深くなればなるほど、
酸素を嫌う歯周病原因菌が生息しやすい環境になります。
そこでその歯周ポケットを浅くして、細菌の生息する住処を小さくする試みが歯周病治療になります。
歯周ポケットが4mmを超えるような状態がなかなか治らない場合には、一般的には「歯肉剥離掻爬手術(フラップ手術)」という健康保険内でできる手術を行うことがあります。
これは歯周ポケットの歯肉をはがし、むきだしになった歯根についた歯石を除去する治療です。
この「保険でできる歯周外科治療」の術後の治癒は、長い上皮性付着になります。
歯のセメント質や歯根膜は失われているので結合組織性付着は復活しません。
ただし上皮性付着という細胞同士の鎖は復活するので歯周病には再びなりにくくなります。
深い歯周ポケットがあっても手術によって上皮付着を復活させてポケットを浅くすることができれば、
「歯周病は治りました」「歯周病が良くなりました」と歯医者さんで言われる状態になります。
これが一般的な歯周治療の治癒形態です。
(ポイント③:上皮性付着は歯周病が治った状態!)
ちなみに自由診療で行うことができる「歯周組織再生療法」の術後の治癒形態はまた少し異なります。
これは別の機会に解説します。
では、前置きが長くなりましたが「歯ぐき退縮」の治療の術後はどんな治癒形態なのでしょうか?
結論から言うと、「上皮性付着」になります。
歯ぐき下がりが起きているところはセメント質や歯根膜が失われているので、
上皮性付着も結合組織性付着も失われています。
しかし、歯ぐきの移植(歯肉移植)などを併用することによって上皮性付着を復活させることができます。
上皮性付着は結合組織性付着ほど強固ではないですが、
歯周病が再発することを食い止める第一の防波堤である「上皮性付着」を再生させることができるんです。
(ポイント④:歯ぐき退縮の手術後の治り方は上皮性付着!)
しかも歯ぐきの移植を併用すれば、上皮性付着を得られるだけでなく、
歯ぐきの先端の厚みも増やすことができるので血液供給の点でとても有利になります。
細菌感染に抵抗するのは血管の中の白血球などの免疫細胞なので「血液供給が豊富=歯周病になりにくい」ことに繋がります。
そして組織抵抗性も高まるので、歯ぐき下がりが再び起こるのも防ぎます。
(ポイント⑤:歯肉移植で歯ぐきが厚くなれば歯ぐき退縮が再発しにくい!)
そもそもこれは多くの一般の方が知らない、あるいはたまに歯医者さんも誤認識していることですが、
「歯周病になって歯ぐきが下がっている方」と「歯周病じゃないのに歯ぐきが下がっている方」がいます。
私たち歯ぐき再生の専門家が言う「歯肉退縮(=歯ぐき退縮)」とは、
後者の「歯周病じゃないのに歯ぐきが下がっている方」を指す用語なんです。
つまり「歯周病じゃないのに歯ぐき退縮している方」は歯周病になることはそこまで心配しないくてもいいんです。
(ポイント⑥:「歯周病じゃない歯ぐき退縮」は手術しても歯周病にはなりやすくなるわけではない!)
歯周病で歯ぐき退縮している方は、先ほどのように歯周ポケットが4mm以上ある状態なので、
その状態に歯ぐきの移植だけすることはありません。
その場合には「歯周組織再生療法」と言う「歯ぐきも骨も再生させる手術」の適応になるんです。
ゴール設定が全然違います。
と言うわけで長くなりましたが、歯ぐき退縮の術後の治り方について解説しました。
「それでも手術はコワい・・。」と言う方もいるかもしれません。
まずは相談からでも受け付けています。
(ポイント⑦:まずは相談からでもOK!)
最後に当院で歯ぐき退縮の手術を行った患者さんの治療例を下記に示します。
・治療内容 : 歯肉移植を併用した根面被覆、歯科用キシロカインカートリッジ1.8mlによる局所麻酔
・目的 : 歯根露出部を被覆し審美性・快適性を改善すること
・副作用・リスク : 歯肉の腫脹、術後出血
・治療期間(回数) : 2週間(2回)
・費用(税込) : 110,000円〜 ※費用は範囲によって異なります