こんにちは。
札幌の歯を残す治療とインプラント治療の二刀流歯医者、ユアーズデンタルクリニック院長の湯口です。
歯を残す場合には様々な治療法があるのですが、今回は外科的根管治療についてお話します。
外科的根管治療とは、その名の通り「外科的に」「根管(歯の根の治療)」を治療するアプローチを指します。
一般の方に分かりやすく解説すると、むし歯が進行して歯の神経にまで達すると、「歯の神経を取る」治療が必要になります。
これが「歯の根の治療」の始まりです。
根っこの治療は専門用語で根管治療と言って、歯の内部にある管を清掃・消毒する治療を指します。
歯の神経を失った歯は、数年から数十年後に細菌による再感染を起こすと、
歯の根の先に膿の袋を作ってしまいます。
レントゲン写真で見ると歯の根っこの先が真っ黒に写ります。
これを放置していると、ある日歯ぐきにニキビみたいな出来物ができてきたり、
食事をするとその歯が浮いて感じたり、
場合によっては夜も眠れないほどの激しい痛みに襲われることもあります。
普段は全く症状がないので気づかないで生活している方がほとんどです。
しかし歯の根の先に慢性炎症が起きているので気が付いたら治療を行うことがオススメです。
通常の正しい根管治療が行われた場合は、根の中の細菌の数が減り、炎症も消退して行くのですが、
中でも痛みが良くならないケースや腫れが引かないケースが出てきます。
歯の根っこは複雑な迷路のような形態をしているので、そもそも根の治療自体がとても難しいです。
根の治療専門の歯科医師がいるくらい難易度が高い治療が根管治療です。
以前行った治療が再治療になるケースも少なくありません。
また通常の根管治療が何らかの理由でできない場合もあります。
例えば歯の中に長い金属製の土台が装着されていて根管治療ができない場合や、
根の先が湾曲していて器具が挿入できなかったり、
根の中に破損した器具が詰まっていたり、
根の先がすでに治療済みで壊れている場合などです。
それらの場合には通常の根の治療では治すことができないため、通っている歯医者さんによっては抜歯を勧められることになります。
しかし抜歯を行う一歩手前の処置として、外科的根管治療という治療法があります。
通常歯の根の治療は、歯冠という頭側から器具を挿入して根管治療を行うのですが、
外科的根管治療は全く逆で、歯根の先端側からアプローチします。
これを歯根端切除術とも呼びます。
歯根先端部約3mmを外科的に切除して菌塊ごと除去する方法です。
なぜ3mmかと言うと、歯根先端部には側枝と呼ばれる通常の根管治療で洗浄できない根管の細い枝や、
以前の根管治療の時に受けた段差、
そして根管内の細菌が根管の外に漏れ出て歯根外側面にバイオフィルムを形成するなど、
解決が難しい問題が歯根先端部に集中しているからなんです。
手術で歯根先端部をカットしたら、そのままにしておく訳ではありません。
逆根管充填と言って、根っこの方から薬を詰め直すことが必要です。
ダイヤモンドチップが先端にコーティングされた超音波チップを用いて、
手術用顕微鏡(マイクロスコープ)で確認しながら根管形成を行います。
歯の先端の中の方を口の中から確認するなんて難しい芸当ですが、
マイクロミラーという手術用外科器具で先端の状態を鏡越しに確認するんです。
精密で繊細な手技が必要になることは言うまでもありません。
その際に使用する薬剤がMTAと呼ばれるマテリアルです。
MTAはケイ酸カルシウムを基本とする無機セメントで、
土木建築用のコンクリートやモルタルの材料として使用されているセメントとほぼ同一のものを生体に使用しやすいように改良した材料です。
根管充填材としては最も優秀ですが保険が効かない薬剤になります。
MTAの詳細に関してはまた別の投稿で解説したいと思います。
このように通常の根管治療では治せない根っこにある細菌感染部分を完全に外部に取り出し、
封鎖性の高い材料で切断面を再封鎖することで組織を治癒に導きます。
では実際の症例を解説致します。
2017年に来院された50代の患者さんです。
前歯のセラミックのやりかえを希望されたのでレントゲン写真を撮影するとこのような状態でした。
黄色の矢印は根の先に膿の袋が黒い影となって見えます。
しかもそのうちの1本は先端で折れた器具がそのまま根の中に残ってしまっています。
このままでは通常抜歯になってしまうのですが、この犬歯は根が長いこともあり、
外科的根管治療を行って保存を試みることにしました。
このレントゲンでは黄色の矢印のところの黒い影が消失していることが分かります。
保存困難な歯を歯根端切除術によって保存することができました。
4年後も再発もなく問題なく機能しています。
根の治療をしているけどなかなか治らない、もしくは抜歯の診断を受けてしまった場合には再度チャンスがあるかもしれないので一度ご相談ください。
まずは通常の精密な根管治療で治癒できるか確認します。
もし、通常の根の治療では治らないと判断した場合には外科的根管治療の適応かどうかを診断させていただきます。
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