こんにちは。
札幌市の自由診療専門歯医者「ユアーズデンタルクリニック 」院長の湯口です。
インプラント学会で上位入賞した実績のある私が「インプラントの骨造成」について解説いたします。
インプラント治療は歯を失ってしまった方に対する欠損補綴の治療法のひとつです。
欠損補綴というのは、文字通り欠損してしまった口腔内の歯およびその周囲組織を補う治療法という意味です。
歯を失ったところにチタン製の人工歯根を埋めて歯の見た目と機能を回復するのがインプラント治療です(ジルコニア製のインプラントもあります)。
歯を失う原因は様々で、重度のむし歯や重度の歯周炎、歯根破折、根の治療では改善できない根尖病変、あるいは永久歯の先天性欠如などが挙げられます。
永久歯の先欠を除いて、その多くは長年の炎症反応によって歯の周りの歯槽骨が吸収してしまっています。
そして歯を抜くことによってさらに、歯を支えていた歯槽骨が吸収してしまうことはあまり知られていないかもしれません。
歯医者が困ってしまうのはその吸収量が多いことなんです。
すでに抜歯をしてブリッジを入れている方なら分かるかもしれませんが、
歯がないところだけ歯ぐきが大きく凹んでしまうんです。
欠損補綴の一つであるブリッジを装着している方から「ブリッジの歯がないところの見た目が気になる」とか「凹んでいるところにいつもモノが挟まる」などのお悩みをよく伺います。
また欠損補綴のもう一つの治療法である入れ歯も、ピンク色の歯ぐきがあらかじめ付いています。
それは失われた歯だけでなく、凹んだ歯ぐきも補うために歯ぐき付きの人工歯となっているんです。
白い歯だけの入れ歯が存在しないのはそういった理由です。
抜歯による骨吸収量は術後6ヶ月で水平的に平均3.8mmの幅の減少と、垂直的に1.2mmほど減少すると文献で報告されています。
つまり、抜歯が必要になるような炎症を起こしている歯は、
健常だった状態に比べて多くの骨が失われて、それに伴い歯ぐきも失われて
骨も歯茎も凹んでしまった状態になるということになります。
具体的には歯ぐきが凹んでいると、審美性や発音、清掃性に問題を生じてしまいます。
「ポイント1:抜歯してそのままだと歯ぐきが凹む」
なのでインプラント治療を行う際には、歯ぐきと骨の凹みを改善する、つまり歯槽堤(歯ぐきと骨のフレームワーク)を適切な形態に回復することが必要になります。
この歯槽堤の形態改善を「歯槽堤増大術リッジオギュメンテーション」と言います。
歯槽堤増大のオプションとしては、GBR、ブロック骨移植、仮骨延長術などがありますが、
汎用性(はんようせい)が高いのはGBRとブロック骨移植です。
これらはインプラント周囲の骨を造ることを意味するので「骨造成」とも言います。
そして骨造成の中でも遮断膜を使用して骨芽細胞を誘導して骨造成を行う術式をガイデッドボーンリジェネレーションguided bone regeneration GBRと言います。
左からDO:仮骨延長術、IBG:インレーブロック骨移植、OBG:オンレーブロック骨移植、GBR:骨誘導再生療法(下記の文献より引用)
Basel Elnayef, DDS, MS1/Alberto Monje, DDS2/Gargallo-Albiol, DDS, PhD3/Pablo Galindo-Moreno, DDS, PhD4/ Hom-Lay Wang, DDS, MS, PhD5/Federico Hernandez-Alfaro, MD, DDS, FEBOMS, PhD6.Vertical Ridge Augmentation in the Atrophic Mandible: A Systematic Review and Meta-Analysis.Int J Oral Maxillofac Implants 2017;32(2):291-312.
これは歯周病治療のGTR法からインプラント治療に派生した治療法で、遮断膜(バリアメンブレン)を用いて上皮の陥入(かんにゅう)を防ぎ、骨が造られる空間を作り、ある一定期間そのスペースを確保することによって、骨芽細胞を誘導する方法なのです。
再生医療に重要な条件は①細胞②足場③成長因子であり、その3つを同時に達成するためにGBRを行います。
ブロック骨移植という方法でも骨造成はできるのですが、
ブロック骨とGBRを比べた際の違いは、
術野の別の部位から骨片をブロックごと採取するので、
手術の侵襲が大きくなって術後の神経麻痺などの合併症が起こりやすくなるのと、
ブロック骨で供給できる量が限られてしまうという点です。
その点、GBRは骨移植材を用いて骨造成を行うため、術野を2箇所以上作る必要がないのと、骨再生のための供給量に限度がないという点で他の歯槽堤増大術よりは比較的低侵襲な術式です。
「ポイント2:GBRは歯槽堤増大術の中で比較的低侵襲な骨造成である」
このように抜歯をすると歯槽骨が吸収し歯ぐきが凹んでしまうので、そのままインプラント治療した際には、審美性・機能性・清掃性に問題を生じる可能性が高まります。
ユアーズデンタルクリニックでは骨造成の一つであるGBRを併用したインプラント治療を行うことが長期的に良好な結果に繋がると考えております。
次回はGBRの種類やメリットをお伝えしたいと思います。